私のことが必要ないなんて言わせません!【菱水シリーズ③】
自分で突き放しておいて、いまさら何してんだ。
「けっこう、気に入っていたんだな」
熱いお湯を頭からかぶり、目を閉じた。
誰かをそばに置く気はない。
失うくらいなら、いっそなにも持たないほうが辛くない。
たまたま、今回は情が移っただけだ。
時がたてば、また元に戻る―――シャワーのお湯を止めた。
シャワーを浴び、着替えると、自分の感傷的な気持ちを振り切るようにして部屋を出た。
昨日の雨の名残か、水たまりが道路わきに残っていた。
公園前を早足で通り過ぎ、大通りに出る。
緑に囲まれたビルの一階にカフェ『音の葉』はある。
都会にあって、緑を感じられる場所のせいか、けっこう繁盛しているカフェだと思う。
早足だったせいか、早く着いてしまった。
カフェ『音の葉』の横の桜の木からは朝まで降っていた雨で葉から雫を滴らせていた。
店を覗くと中は暗く、札は準備中のまま。
「なんだ。呼び出しておいて誰もいないとかはないよな?」
ドアノブに手を触れた。
鍵はかかっていない。
ドアを開けると、スタインウェイのグランドピアノの前に渋木唯冬が立っているのが見えた。
「けっこう、気に入っていたんだな」
熱いお湯を頭からかぶり、目を閉じた。
誰かをそばに置く気はない。
失うくらいなら、いっそなにも持たないほうが辛くない。
たまたま、今回は情が移っただけだ。
時がたてば、また元に戻る―――シャワーのお湯を止めた。
シャワーを浴び、着替えると、自分の感傷的な気持ちを振り切るようにして部屋を出た。
昨日の雨の名残か、水たまりが道路わきに残っていた。
公園前を早足で通り過ぎ、大通りに出る。
緑に囲まれたビルの一階にカフェ『音の葉』はある。
都会にあって、緑を感じられる場所のせいか、けっこう繁盛しているカフェだと思う。
早足だったせいか、早く着いてしまった。
カフェ『音の葉』の横の桜の木からは朝まで降っていた雨で葉から雫を滴らせていた。
店を覗くと中は暗く、札は準備中のまま。
「なんだ。呼び出しておいて誰もいないとかはないよな?」
ドアノブに手を触れた。
鍵はかかっていない。
ドアを開けると、スタインウェイのグランドピアノの前に渋木唯冬が立っているのが見えた。