紅椿の契り~後宮に咲いた偽りの華~
三、名前は「椛(もみじ)」

「椿じゃなくて、椛?」

「ああ。紅椿の下で出会い、椛の葉が舞う季節に、お前は母になった」

「……いい名前ね」

「だろ。俺が考えた。神意でも運命でもない――“お前との記憶”から選んだ」

 彼女は一瞬、泣きそうな顔をした。
 でもすぐに笑って、娘の頬にそっと触れる。

「椛……どうかこの子が、愛されて育ちますように」

「当然だ。……愛されすぎて困るくらい、俺が与えてやる。
 お前にも、こいつにも。生涯、飽きるまで。いや、飽きてもずっと」

 天焉の言葉に、雅美は言葉を失った。

 それは、かつて命を削り、禁呪にすら手を染めた“狂愛”が、
 いま――“優しさ”という形に昇華された瞬間だった。

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遅すぎた後悔、でも君を離さない

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「君が壊れるまで、俺は何も知らなかった。」 ー気づいた時には、もう遅かった。君はずっと一人で苦しんでいたのに、俺は何も知らなかった。知ろうとしなかった。 「大丈夫だよ。」そう言って笑う君の言葉を俺はそのまま信じてしまった。本当は助けてほしいサインだったのに。 母の言葉も、家の空気も、君がどれだけ傷ついていたのかも、俺は見ようとしていなかった。 そしてある日ー 君は3人の子供を連れて、突然いなくなった。 残された家は静かで、そこで初めて俺は知る。 君がどれほど追い詰められて一人で耐えていたのか。 遅すぎるかもしれない。それでもいい。 もう二度と同じ過ちは繰り返さない。 母よりも何よりも、俺は君を選ぶ。 逃げた妻を追いかける夫と、壊れかけた心を抱えた妻。 すれ違った二人がもう一度出会うとき、止まっていた時間が動き出す。 これはー 遅すぎた後悔から始まる、家族の物語ー

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