転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!

 ユキリは渋々、彼らの元へ歩み寄った。

「今から食べるの?」
「うん」
「間に合う?」
「気合でなんとかするよ」
「じゃあ、僕がタイムキーパーになってあげる」

 ユイガとマイセルの間の空いている隣の席に座ってからカトラリーを手に取れば、すでに食事を済ませていた殿下からありがた迷惑な提案をされてしまった。

(遠慮しますって、言いたいのに……!)

 この場で王太子の好意を拒否すれば、周りが黙っていない。
 先ほどまで、あれほどヒソヒソと陰口を叩かれていたのだ。
 今度こそ面と向かって罵倒され、我慢できなくなった弟が喧嘩を買って大騒ぎになるのは目に見えている。

「いただきます」

 ユキリは伝えたかった言葉をぐっと飲み込み、小さく会釈をしてから食事を始めた。

(た、食べづらい……)

 マイセルはニコニコと満面の笑みを浮かべて、こちらの様子を嬉しそうに見守る。

(殿下に監視されながら、食事なんて……。珍しいことではないけれど……)

 ユイガと殿下の2人にじっと見られるのは馴れたものだが……。
 不特定多数の心ない視線がついて回るのには、まだ耐性が出来ていないようだ。

< 131 / 245 >

この作品をシェア

pagetop