転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
早くしなければ、ユキリが目を覚ましてしまうからだ。
(急がないと……)
マイセルはすぐさま、他の貴族達と歓談していたラクア男爵の元へ向かった。
「ラクア男爵。少々よろしいでしょうか」
「あ、ああ……。もちろん。殿下にお声かけ頂けるなど……光栄です」
「ありがとう」
口元を優しく綻ばせてお礼を告げた瞬間、その場にいた周りの人々から心ない言葉が投げかけられる。
「殿下が男爵に、声をかけたぞ……!」
「腕の中にいらっしゃるのは、どこのご令嬢かしら……?」
「まさか、婚約者をお決めになられたのか……?」
マイセルがこのまま男爵令嬢を選べば、間違いなく騒ぎになる。
彼女よりも爵位が上のものは、ユキリを傷つけてその座を奪いかねなかった。
(僕があいつらから、この子を守らないと……)
小さな身体を抱きしめる力を強めると、茶会を抜け出して王城の空き部屋へ向かう。
そして、ユキリの頭を膝の上に乗せてソファーに座り、テーブルを挟んで男爵と対峙した。