転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 恐る恐る問いかけると、こちらと目を合わせたマイセルは優しく微笑む。
 その後、頬に触れながら告げる。

「2人に負けない仲の良さを、アピールできる?」
「例えば……?」
「僕が好きで堪らないって、ユキリに全身で表現してほしいんだ」
「ええっと……」

 ユキリは彼が望む自身の姿を思い浮かべた。

『殿下、好き好き! 大好き!』

 ベタベタと殿下の腕にまとわりつき、頬を寄せて胸元へ心を許した猫のように甘える仕草を想像する。
 その後、難しそうな顔をしながら少しだけ思い悩む。

(私にできるかな……?)

 明らかにキャラではない対応を求められている。
 だが……。
 それができなければ、弟が恋愛学園で素敵なパートナーに巡り合う機会を奪うことになってしまう。
 それは姉として、絶対に許せなかった。

「わかった。頑張ってみるわ」

 ユキリが考え抜いた末にどんな答えを出すのか、予め想定していたのだろう。
 彼は微笑みを深めると、満足そうに額に口づけた。

「楽しみにしているよ」

 こうして殿下は権力を傘にかけ、異例の退学撤回を行い――ユキリは再び、恋愛学園へと舞い戻った。
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