転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「お待ちくださいませ! ロンド様~!」

 ランカが黄色い声を上げながら2人の背中を追いかけようとした。
 今こそが、積年の恨みを晴らす絶好の機会だ。

「ランカ・ルアーナ……!」
「きゃあ!? 一体、なんですの!?」

 茂みから勢いよく立ち上がったユイガは、地を這うような怒声を響かせて公爵令嬢の名を呼んだ。
 悲鳴を上げてこちらを振り返った彼女は、弟の姿を見捉えると――目の奥から大量のハートマークを浮かべた。

「まぁ! わたくし好みの、素敵な殿方に成長しましたのね!」
「黙れ……! 今まで受けた姉さんと父さんの恨み、ここで晴らしてやる……!」
「殺し愛ですの!? よろしくてよ! 楽しみましょう!」

 ユイガから憎悪の目線を向けられても、ルアーナ公爵令嬢は恍惚とした表情を浮かべて喜んでいる。

(凄いなぁ……。あの子、案外大物になれるかもしれないね……)

 逃げる宿敵とナイフを片手に振り回す弟が追いかけっこを始める姿を、何事かと目を見開き驚く新入生たち。
 そんな彼らに紛れるなら、今しかない。

 そう考えたユキリは草木の間から通学路に顔を出すと、ユイガとランカの争いに巻き込まれないように細心の注意を払いながらロンティナの後を追う。
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