25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
佳奈は母の新居を訪れた。

明るくて風通しがよく、静かな環境も申し分ない。何より驚いたのは、部屋に並べられた家具の数々だった。どれも新品でセンスがよく、母の好みにぴったり合っている。
(え? こんなに新調したの?)

思わず内心でつぶやく。正直、家賃や初期費用のことが気になった。けれど——母は堅実な人だ。
父の遺した遺産や、前のマンションの売却益もあったはず。無理はしていない、と自分に言い聞かせた。

それよりも、母が晴れやかな表情をしていたことがうれしかった。

この家で、母が新しい時間を気持ちよく過ごせるように——そう思って、引っ越し祝いに選んだのは、2客のコーヒーカップのセットだった。
「いつか誰かとペアで飲めたらいいね」なんて冗談っぽく渡したけれど、心からの願いでもあった。

久しぶりに母娘でたくさん笑って、おしゃべりして、あっという間に夕方になった。

夜。佳奈は颯真と夕食を囲みながら、母の新居がいかに素敵だったか、夢中で話した。
「ねえ聞いて、あの家具、たぶん全部新しいの。しかもサイズもピッタリで、まるで最初から置かれるのが決まってたみたいだったの!」

笑いながら話す佳奈を見て、颯真はふと目を細めた。
聞いているうちに、ある違和感がじわじわと心に浮かび上がってきたのだ。

その物件——場所も間取りも設備も——彼の仕事柄、決して安い物件ではないと知っていた。
さらに、入居に際して父・真樹が同席したと聞いた時の、わずかな違和感が蘇る。

(まさかな…)

けれど、父のことだ。やりかねない。

「ねえ颯真? どうしたの? さっきからちょっと顔こわいよ?」

「……いや、大丈夫。ただ……近いうちに、親父に一度話しに行こうと思って」

佳奈はきょとんとしながらも、何かを感じとったように小さくうなずいた。
< 50 / 102 >

この作品をシェア

pagetop