響け!月夜のアジタート
ひとりぼっちの舞台
手紙を受け取ってから一週間後、レオンハルトたちはレークヴィエム国へ向かうための列車に揺られていた。何度も列車を乗り換え、北へ北へと目指す。

「……だいぶ気温が低くなってきたな。風邪引きそうだ。お前らも防寒対策しっかりしろよ!」

列車を降りたアントーニョが体を震わせながら言う。するとオルハンがフッと笑いながら言った。

「トーニョは防寒対策なんて必要ないと思うけどな」

「あ?どういう意味だよ?」

オルハンをアントーニョが睨み付ける。オルハンは笑みを浮かべたまま言った。

「馬鹿は風邪を引かないって言うじゃないか」

「テメェ、今日こそぶん殴ってやる!!」

アントーニョが手足を虎のものに変化させ、オルハンはそれに応えるように亡霊たちを呼び起こす。駅にいる他の乗客たちの視線が次々と向けられる。

「レオン」

「レオンハルトさん」

マーガレットとカナタがレオンハルトを見つめる。他人のフリはできないな、とレオンハルトはため息を吐きながら二人に向かって杖を向けた。
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