白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。


 それに気付いたのとほぼ同時、気分が悪くなるような奇声が上がる。

 振り返れば、先程倒したはずの蛇のような体をした妖がゆらゆらと立ち上がっていた。どうやら倒し損ねていた個体がいたようだ。

 男に気を取られていたせいで動きが遅れた。刀を構え直す前に蛇のような妖は、紫陽に向かって一直線に襲いかかる。


(まずい)


 そう思い、回避行動を取ろうとしたのとほぼ同時のことだった。

 いつの間にか紫陽の真横に立っていた銀髪の男が、まっすぐ手を伸ばした。その指先から、青白い炎が蛇のような妖に向かって放たれた。


「ぐわああああ……」


 美しい炎は一瞬のうちに妖を焼き、粉々に消してしまった。

 息を止める。何が起こったのかよくわからない。何故かこの妖は、紫陽のことを助けたらしい。

 どうして。紫陽は十分すぎるぐらい持ってた警戒心をさらに引き上げ、再び男に刃を向けた。


「何のつもりですか」

「そう殺気立つな。お前を害する気はない」

「妖の言うことを信じられると?」


 そんな言葉には答えず、彼は紫陽の愛刀に素手で躊躇なく触れた。

 刃に触れた皮膚に傷が付く。が、それはほんの一瞬。傷はまたたく間に修復されていく。


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