家族に支度金目当てで売られた令嬢ですが、成り上がり伯爵に溺愛されました
黒の上着に銀の刺繍がほどこされた格式高い装いが、彼の鋭い目元とよく似合っていた。

彼は一歩、私に近づき、じっと見つめた。

「綺麗だ。」

たった一言。でもその声がまっすぐで、心の奥に届いた。

「お世辞でも嬉しいです」と私が笑うと、セドリックも穏やかに微笑んだ。

「式の前に言っておきたいことがある。」

そう言って、彼は私の手をそっと、けれど力強く握った。

彼の手の温もりが、私の緊張をほぐしていく。

何を言われるのか分からないけれど、この瞬間だけは確かに、心が繋がったように感じた。

「僕たちは政略結婚だが、いつか本当の夫婦のように、愛し合える仲になれたらと願っている。」

セドリックがそう言った瞬間、私はそっと首を振った。

「私は……愛を望んではいません。」

あなたが私を受け入れてくれただけで、もう十分。

そばかすのあるこの私を、拒絶せず迎えてくれたことが、何よりも嬉しかった。
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