突然、課長と秘密の関係になりました
「こいつは俺の彼女じゃない。
美味い店教えてくれるやつだ」
「……なにそれ。
タウン誌の人?」
と浩司に言われる。
ちなみに、みんな話しながらも、せっせと荷物を運んでいた。
「俺たちの妹になる人だ」
とちょっとの間のあと、彰宏が教えた。
「へえー、そうなんだ?
あ、僕の名は綿貫浩司」
えっ? と一彩はお洒落メガネの人に訊き返す。
全然苗字が違っていたからだ。
きょとんとした自分を見て浩司は笑う。
「僕を知らないの?
面白いね、この人」
「あっ、もしかして、綿貫さんも声楽家ですか?」
それで綿貫は芸名なのかなと思ったが、ははは、と浩司は笑う。
「僕は――」
ん? と浩司は手元を見た。
朱鷺子から回ってきたのがダンボールではなく、色紙とペンになっていたようだ。
それに、さらさらっと書いて浩司は言う。
「俳優の綿貫浩司だよ」
「そして、うちの父の隠し子だ」
と彰宏が言う。