はいはい、こちら中野通交番です。 ただいま熱愛中。
 ボーンボーンボーン。 柱時計の真似をしてみる。
「あらあら隠し芸大会にでも出る気なの?」 「仮装大賞を狙ってまーーす。」
「あっそ。」 「冷たいなあ。 ちゃんと見てよ。」
(見なくても物になってないのは分かるわよ。) 「ひどいなあ。 これでも真剣に考えたのに。)
「お父さんの真剣はほんのちょっとだもんねえ。」 麻理は煮物を椀に盛りながら笑った。
「グシュン。」 「そこでおとなしくしてなさい。」
 まったく、、、、、どうやっても麻理を唸らせることは出来ないんだ。 お目が高過ぎてなあ。
ご飯を食べていても俺は黙ったまま。 麻理はさっきからYouTubeに見入ったまま。
 そこへ姉ちゃんがドタドタト駆け下りてきた。 「うるさいわねえ 相変わらず。」
「ごめんなさいねえ。 うるさいのがあたしだから。」 「分かってるんなら何も言わないわ。」
 麻理は澄ました顔でお茶を飲んでおります。 姉ちゃんはとうとう俺を揶揄う力も無くなったらしい。
それはそれでいいことなんだけど、どっか寂しいよなあ。 お互いに60代なんだし、、、。
 食事を済ませると姉ちゃんは自分の食器だけ洗って部屋に戻っていきました。 「寂しい人ね。」
「お前に突っ込まれるからな。」 「私のせいなの?」
「お前はショップ時代からのライバルだったからなあ。」 「そうねえ。 でもそれとこれとは関係無いわよ。」
「そうかなあ?」 「心配だったらあなたが可愛がってあげればいいでしょう? 昔からそうだったんだし。」
「俺はそれでも麻理ちゃんのほうがいいんだもーーーーん。」 とまあ、俺はまた麻理のlサイズのお胸を狙うのであります。
「それしか無いのよねえ お父さん。」 「いいじゃん。 これが人間だ。」
「偉そうに言うんじゃないわよ。 ボケ爺。」 「ひどいなあ、ボケ爺だって。」
「ほんとのことでしょ?」 そう言って麻理は冷たく笑うのですよ。 やられたわ。
 片付けが終わったらお風呂を沸かして、、、。 姉ちゃんを先に入れますか。
「ねえ、今夜くらいは一緒に入ってよ。」 姉ちゃんがあの甘える顔で言ってきた。
「ダメ。」 「いいでしょう? お願い。」
「ダメ。」 「頼むからお願い。」
 「なあに? また妬いてるの?」「そうみたい。」
「いいじゃん。 入ってあげなさいよ。」 「いいのか?」
「だってエッチしても子供は妊娠しないでしょう?」 「だとは思うけど、、、。」
「いいじゃない。 久しぶりに可愛がってやってよ。」 麻理もそう言うもんだから俺は久しぶりに姉ちゃんと入ったのであります。
「久しぶりでしょう? 見ていいわよ。」 なんか今夜の姉ちゃんは嬉しそうだなあ。
 体を洗いながら俺の顔を覗いてくるんだ。 気になるなあ。
「いつも麻理さんと入ってるのよね? いいなあ。」 「姉ちゃんも誰か捕まえればいいじゃん。」
「だからあんたを捕まえたのよ。」 「そんなこと言ったって、、、。」

 布団に入っても何だか麻理のお胸が気になって探しております。 「寂しん坊ねえ。 甘えん坊ねえ。」
「どっちだよ?」 「お父さんの場合は両方ねえ。 手に負えないわ。」
「あっそ。」 俺はプイっと横を向いてみる。
 しばらくして麻理の顔を覗いてみると、、、。 あらあら気持ち良さそうに鼾をかいて寝てますわ。
結局はこうなるんだよなあ。 俺って何なんだろう?

 次の日も取り敢えず仕事に行ってみる。 交番もやることは無くなってしまった。
道が分からなくなれば電光掲示板を見ればいい。 行き先を言えば機械が教えてくれる。
ショップが無くなったから何やかやと騒ぎを起こされることも無い。 静か過ぎる交番で弁当を食べるだけ。
 倉庫に入ってみても何も無い。 有るのはだだっ広い空間だけ。
時間になれば2階の窓が開いて巡回ドローンが飛んで行く。 事件でも起きれば勝手に本部に連絡されてパトカーが飛んでくる。
俺はただ座っているだけ。 たまに無線の交信を受けるだけ。
 最近ではカラスまで寄り付かなくなっちまった。 中野通も寂れてきたなあ。
向かいに在ったうどん屋もいつの間にか移転してしまっている。 空き地は誰にも使われないまま。
 そうそう、2020年代に奇妙な米不足が表面化して米価高がやたらめったら叩かれたことが有るだろう? 令和の米騒動だ。
あの後、総理大臣様はしこたま考えたらしい。 思い切ったことをやらないと、、、。
それで思い付いたのが「飲食店を半分に減らすぞ。」ってことだった。
もっちろん思った以上の反発も有ったさ。 職業選択の自由を侵害されたって全国で訴訟が巻き起こった。
でも考えてみな。 恵方巻だけで何億も無駄にしてるんだよ。
全国の飲食業を調べたらどれだけのフードロスが出てくるね? たぶん北海道がゴミで埋まるくらいになるんじゃないか?
それはまあ大げさすぎるとしても今やフードロスは避けて通れない問題になってるんだよ。 それに正面から切り込んだんだ。
 24時間営業をやる。 昼飯時はいいとして夜明け前に誰が食べに来るってよ?
どうせ一晩中飲んだくれてた連中くらいしか動いてないんだぜ。 そんなやつらだって満腹になるまで食べるとは思えない。
だとしたら残りは全てゴミ。 そもそも真夜中に動いてる人なんて数えるくらいだよ。
 夜勤で動いてればまあ食べに来ることだって有るだろう。 でも一般人が食べに来ることは無い。
それでも意地になって24時間営業をやり続けてる。 その店のフードロスはとんでもない量だよ。
 そして目に付くのがコンビニ。 交差点ごとにどっかの店が並んでいる。 都会であろうとド田舎であろうと関係無く。
一晩中蛍光灯がキラキラしていて食べ物も棚にたっぷり並んでいる。 誰が買うんだろう?
食べ物屋に比べれば年齢制限も無いから子供だって買いに来る。 それでいいのかなあ?
 2時間くらいで売り切れなかったら廃棄するんだろう? それもまたもったいないことだよなあ。
そんな現実を見たもんだから農水大臣も腹を決めて「飲食業に売り渡す食材を半分に減らせ!」って命令した。 もちろん業界はこぞって反発した。
だけど庶民はそれ以上に頑固だった。 スーパーに食材を寄越せって騒いだんだ。
1年2年と経つうちにコンビニは消滅していった。 そしたらスーパーの売り場は収めきれないくらいの食材で埋まってしまった。
 ここからがさらに問題なんだ。 農水大臣は外食チェーンに目を付けて半端ない規制を掛けてきた。
思えば規制なんて何も無かった世界にどぎつい縛りが課されるようになったんだ。 業界も沸騰したっけな。
裁判やらデモやらいろんなことが有ったよ。 でもそれも全て庶民のため。
 気付いた時には大手の飲食店は悉く廃業していた。 料理人も居なくなっていた。
おかげで夜の町はすっかり変わってしまった。 食べ物の匂いも無くなりキラキラした蛍光灯も消え去った。
昭和の昔に戻ったんだね。 激動の時代だった。

 静かな静かな町の中で平和な暮らしが戻ってきた。 外食族は長年文句ばかり言ってたけれど、自炊のほうが手間はかかるが金は掛からないとか言っておとなしくなったんだよなあ。
ファミレスが出来たからってそれが全て美味しいとは限らない。 みんなが大好きだとも限らない。
何か違う料理を出してるのかと思ったらカレーにオムレツにハンバーグ、パスタにステーキに丼とまあどの店も同じメニューばかり出すんだよなあ。
 そりゃな、インド料理とかタイ料理とか言うのなら分かるよ。 ぜーーんぶ、個性の無い同じ料理ばかり出すんじゃあ金を使う側としては困るわなあ。
ラーメンだってうどんだってそばだっておにぎりだって同じだろう。 ましてやコンビニ弁当なんて会社の利益しか考えてない食べ物なんだから、、、。
 そいつらが掃除されただけでも嬉しいよ。 如何に嫁さんの手料理が美味しいかってことだなあ。 なあ麻理。
「そこだけだもんね。 お父さんが褒めてくれるのは。) 「そうかなあ? もっと褒めてると思うけど、、、。)
「それしか無いじゃない。 後あんたが愛でてるのはこの胸だけでしょう? 変態じじい。) 「ひどいこと言うなあ。 変態じじいだって。)
「ほんとじゃない。 お父さん そこしか見てないんだから。) 「触るけど見てないよ。」
「え? いっつも触ってるの? エッチーーーー。 エッチーーーー。」 麻理はまたまたハエ叩きを持ってきた。
「まったくもう、、、。 嫁さんはすぐこれなんだからなあ。」 「体を守るのは私の責任ですから。」
「あれだけやらせといてか?」 「昔は昔。 今は今よ。」
「はいはい。 そうですねえ。」


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