溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。

第4章 ルアンの現状 第1話

 第1話



 全身全霊で逃げるべきだった。

  ずっと心の奥底で、危地を察知していたのに。

  どうして好奇心が疼いてしまった?

  壮観な海、興味をくすぐる小屋。

  その小屋から飛び出てきた青年に連れられ、室の中の苦悶していた美々しい少年に心奪われ、逃げ遅れてしまった。

  目の前の材料は、好奇心をそそるには充分すぎるほどだったのかもしれない。

  おしとやかな姫君を振る舞うなんて、所詮私には無理難題な話。

  すきを見つけてあらゆる手を使い、一目散に逃げるべきだった。

  出来ないこと、なかったのに。

  幼く見えても、周囲から落ち着いていると言われることが多い。

 それでも大人になれずにいた。

 まだまだ心身、幼すぎた。

 自分自身のためには、どうにか逃げたほうが良かったのに。

 どうあれ逃げきれなかった?

  あとのまつりとは、後悔ばかり。

  好奇心から逃げられなかった、行く末。

  これは、偶然なのか、必然なのか?

  過酷な巫女養成所よりも、もっとありえない現実が動き出す。

  それが見事に、自分の全身全霊へ降りかかってくるなんて。

 本当、目覚めたくはなかった。

 それが出来ればいいけど。

 私の胸奥が軋み、不可解なことを放っておいては、危険すぎる。

 わかっているかこそ、できない現状がこの先待っている。

 意識が戻り始めて落ち着いて、周囲の気配を感じていた頃。

 徐々にまずいことを思い出してしまった。

 まだ小屋にいたあの時、本当に逃げれば良かった。

 発作と関わるのは、人助けは人道的に仕方ないとしても。

 その後、すぐさま逃げれば。

 小屋に置いて行かれて、命令を破り逃げだ出した時、逃げられると思っていた。

 いつもの過酷な罰を受けてる時、彼が現れて連れ去られてしまった。

 自己が目覚めて、薄れゆく意識の中、もっと難解な問題が出てきてしまうなんて。

 なんて無情すぎると思う、過酷な現実。

 私は、レイカルド様を知っている。

 今のレイカルド様が何者かは、まだわからないけど。

 でも知っている。

 穢れ以上に彼の強烈な存在感に、気づいてしまいました。

 彼の前世は、双子の王子の一人。

 前世、私を束縛して解禁した双子王子。

 一人しかいないから、双子王子のどっちかは不明。

 印象的だった髪型、いつものくるくる舞うカールヘアではないけど。

 口調が一緒でSっ気があるから、大体検討はつくけど。

 穢れ多い邪神の片割れを持つ帝国の王子であることも、今も昔も変わらない。

 最も違うのは、知っている人物より、はっきりと退行してる。

 私と同じ生まれ変わったみたいだけど、、、。

 記憶はすべて戻らず曖昧だから、深く関わる前その前に、全力もって小屋の時に逃げ出せば良かった。

 また捕縛されてしまうーー。

 あの日あの時、二人のこと、とても好きだった。

 二人と一緒にいて、振り回されて心身壊れそうな自分と戦っていても、内心幸せだった。

 いまだに胸疼くけど、二人と一緒にいたいなんて。

 今は、とてもわからない感情となっている。

 現況は、畏怖と違和感だらけ。

 記憶すべて思い出すのも恐ろしすぎると感じてしまうのは、今いる場所が穢れ多い帝国だから?

 それとも過去からの警鐘? 今感じていることすべては。

 もう一人、再会する前に逃げなければ、また恋をして自分の心身が壊れてしまう。

 きっと、このまま監禁されてしまうのは、とても危険でいけないこと。

 相変わらず私の地位は低いから、彼らに相応しいとは今も昔も思えない。
 
 また混乱を招いてしまう前に。

 細心の注意を払いすきをみて、彼らから諦めずに逃げなければいけない。

 私にとってそれは、今も昔も確かなこと。

 恋なんて監禁された前世で、自分の全てが壊れそうなことが怖いのは覚えていて、本当こりている。

 相変わらず自由が欲しい私は、過酷な帝国からいつか逃げる機会を見つけるしかないーー。




 
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