溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。
 第2話


「ねえ、ルアン。どこまでも、僕を否定するつもり?」

 私は、レイカルド様に睨み返され、少し苛立だしげに彼は毒づく。

「わ、私は、本当のことを言っているまでですって!」 

「違うよ、それは」

「あとあと後悔ないように、しっかりと選んだほうが、レイカルド様のためにいいってことです」

 拗ねた眼差しに心外と思った私は、レイカルド様を説得しようと、すぐさま言い返す。

「だから、それは僕自身が、よく考えたことだって」

「毛色の違う子だから、単に面白がっているだけじゃないのですか?」

「それは、多少あるけど」 

「そうでしょう? 騎士様を困らせてはだめですよ、レイカルド様は」

「別に困らせていないよ」

「していますって」

「してない」

「だから、私は姫君としては、本当に不充分ですから」

「そんなことはない」

「私自身でも、レイカルド様の相手としては、とても無理だと思うのに。そう言われませんでしたか?」

「そりゃあ、ハレットには、多少言われたけどねえ」

 私の言葉に思い出したように、レイカルド様は言った。

「そうでしょう? 穢れを払う大切な儀式なのだから、もう少しきちんと自らの御身のためにお考えになってくださいませ、ね?」

 私は、そう宥めるかのように、レイカルド様の華美な顔を覗きこんで言う。

だが、レイカルド様は突然笑い出してしまった。

「本当、面白い子だよねえ」

「はあ?」

「ますます気に入ったよ。この僕に説教するなんて」

「べ、別にそんなつもりは、私にはないですって!」

 くつくつと笑いがとまらないそんなレイカルド様に、私は緋色の瞳を吊りあげる。

「そうだろう?」

「違います!」

「あるって。それにね、女の子とこんなに言いあったのも睨まれたのも、ルアンぐらいだって。本当に面白すぎる」

「だから、面白がられても困ります。私は事実を述べたまでですって……」

 レイカルド様の笑い声に、私は口を尖らせた。

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