溺愛する身代わり姫を帝国王子は、逃さない。
 第3話



「事実か。じゃあさ、僕を助けくれないか? ルアン」

「え?」

 今度はレイカルド様の真剣な声音に、私は瞠目する。

「僕は、確かに女に嫌気をさしているのは、事実だからねえ」

「は?」

「だから、どうしても食指がわかなくて。上から薦めてくる女にも、ハレットの連れてくる女にさえも、どうあれ疑心暗鬼ばっかりでねえ」

 少し自嘲気味に、レイカルド様は毒づいた。

「レイカルド様……」

「それで昨夜のように、切羽詰った騒ぎを起こした。兄上のように、僕も冷静に対処できればいいけど。どうしても嫌悪を覚えて、逃げ出す始末で」

「……」

「それでも狂いそうになり、目の前にいたよくわかっていないルアンに、僕は思わず縋ってしまったけど」

 少しすまなさそうに、レイカルド様は私を見おろしている。

「……」

 労わるような眼差しに、私は前世を思い出し、息をつまらせて目を瞬かせる。

「狂いたくは、ないよ。世継ぎの兄上とともに、先を見てみたい」

「レイカルド様……」

「それでも、他の事に関しては、上手く立ちまわれても、ルアンのように、僕も絶対嫌なものは嫌だから」

「それは、わかるけど」

「食指がわかない潔癖症だと、自負している自分自身に不甲斐なく腹立たしさえ、感じてはいるけど」

 言い募るレイカルド様は、苦汁に顔を歪めた。

「でも、私では、レイカルド様の相手になど、なりません」

 私は、どうにかこうにか心を落ち着かせて声を絞り出し、口を挟んだ。

「だから、ルアン自身はね、僕にとっては何も問題ないけど?」

「ですがっ!」

「僕としてはね、ルアンのことが何よりも気に入っているよ。とても可愛らしいしね」

「な、何を言っているのですか、レイカルド様は!」

 さらりとレイカルド様に言われ、私は動揺しながらも言い返す。

 思わずほんのりと頬を赤く染めてしまう。

 レイカルド様は、一瞬瞠目していたが、私を抱いていた腕に力をこめてきた。

「……本当、可愛い」

「は? レイカルド様は、本当に何を言っているから!」

「本当だって。僕はルアンがいい」

「だから」

「そうルアンに嫌がられても、僕としては他の子では嫌だ」

「私自身に、近づくものはいませんでした。力ないことは、確かなのですよ?」 

 レイカルド様の甘い囁きながらも、私は怪訝そうに顔を歪めてしまう。

「それも確かにあるけどね。でも僕は本当にルアンがいい」

「でも」

「ルアンじゃないと嫌だ」

 レイカルド様は、耳近くでそう言って、私の耳朶に食らいついた。

「……もうっ……!」

 私は、その感触に、大きく肩を震わせて身悶え、文句を垂れた。
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