組長様は孤独なお姫様を寵愛したい。
それから2秒ほど私の目を見つめるとまたすぐに口を開いた。



「じゃ、お前は俺と一緒に飯食おっか。」


「え、一緒に…ですか?」



…あ…、予想だにしない発言に思わず聞き返してしまった。

失礼だったかな。



「そう。…ほら、そこ座って。」



良かった、怒ってない。

そう思いながら指定されたところに座る。



目の前には本当に美味しそうな和食が揃っている。

…っ、美味しそう…。




もう家ではずっと腐りかけの、もしくは腐った食パンを食べるか、白米を何のおかずも無しに食べるだけだった。


だから今はこの目の前の食事が本当に美味しそうで仕方がない。



「食べて、いいですか…??」

「うん、いいよ。」


「ありがとうございます。……いただきます…!」



お箸をもってお味噌汁や、お漬物、鯖の味噌煮、白米を口に運ぶ。



「…美味しい…、」



こんな美味しいご飯を食べれるのは本当にいつぶりだろう。



「フツーの飯なのにそんなに美味い?」



橘さんにそう聞かれて、一瞬時が止まった。

…普通のご飯…?これが?…でもそっか、確かにそうだ。


私以外のほとんどの人にとってはこのくらい"普通"なんだろう。



「本当に、美味しいです。」



だけど私にとっては"普通"じゃない。

胸が幸せでいっぱいになるくらい美味しいんだ。
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