組長様は孤独なお姫様を寵愛したい。

2

真っ黒の車に乗り込むと、さっきの男の人が運転席に座って車が進み始めた。


無言でも圧を感じる重い空気。


だけど何となく、本当になんとなくだが、この人はあの両親たちが言っていた "あの方" では無い気がする。



そんなことを思っていると前方から声が聞こえてきた。



「俺の名前は羽山だ。うちの組長の右腕…みたいなもんだ。」



自己紹介…?


ヤクザでも自己紹介はするものなんだ、と失礼ながらにそう思った。


「…よろしくお願いします。」




私の名前なんてもう既に知っていることだろうし、私が何か補足して言うような事も無いから、よろしくとだけ伝える。



「……お前にはうちで働いてもらう。顔が良いからまぁ多分風俗とか、キャバとかだろうな。」



「…はい、分かりました。」



お互いに淡々とした口調でそんな会話をする。


風俗、キャバ嬢…


どれも自分とは無縁の職業に正直一瞬困惑した。

だけどここに私の意思なんて反映されないし関係ないから返事はyes以外許されないだろう。



男の人はそれだけ言うともうそれ以上何も話さなかった。

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