【短編】わたくしの婚約者になってください。
「……まるで、翼をもいだような傷痕ですね」

 自身の上着を脱いで、そっとわたくしの肩にかけるリオに、顔を上げる。

 袖を通してみると、ぶかぶかだ。これは男女の身体の違いなのだろうか。

「今日のパーティーに参加したということは、わたくしに興味があると思っても?」

 上着を抱きしめるようにぎゅっと握り、リオと視線を合わせる。

 ――そのときの彼の表情を、きっとずっと忘れない。

「許されるのなら、あなたのことをずっと描きたいと思っていました」

 リオは、とても優しい笑顔を浮かべていた。学園で見たことのない表情だったので、ドキリと鼓動が跳ねた。

「……『ウェイドの女神』を描いたのに?」
「あれは……あんなふうに士気を高めるのかと思って……想像で描いたものなので」

 彼の中の自分はいったい、どんな人物なのだろうか。

 あの絵画のような、凛々しくも美しい乙女だと思ってくれているのか、興味が出てきた。

「しっかりとあなたを見て、毎年新しい絵を描きたい」

 真摯(しんし)なまなざしに、こちらのほうが照れてしまう。

 きっと今、顔は真っ赤に染まっているだろう。だって、頬が熱い。

「――それがどういう意味か、わかっているのだな?」
「もちろん」

 わたくしの肩に、彼の手が添えられる。

 ゆっくりと目を閉じてリオの体温を感じていると、「あ」と彼の声が降ってきた。

「どうした?」
「空、すごいですよ」

 目を開けて空を確認すると――……大量の流れ星が、まるでわたくしたちのことを祝福するように、夜空を駆けていた。「流星群」と、言葉が重なり、思わず見つめ合う。

「……リオ・デインズ侯爵令息。わたくしの婚約者になってください」
「喜んで。ロザリンド・ノーラ・ウェイド公爵令嬢」

 ――流星群に見守られながら、その日、わたくしたちは婚約者になった。
< 11 / 11 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

【完結】婚約破棄は計画的に。

総文字数/6,470

恋愛(その他)10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
愛読していた小説の悪役令嬢に転生したアイリーン。 婚約破棄、喜んで同意いたします!
【完結】きみを守るために、演じ切ってみせよう。

総文字数/8,429

ファンタジー13ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
 ――せめて、シャーロットが南の大陸につくまでは、なにも起きませんように。
【完結】婚約破棄イベントが壊れた!

総文字数/12,905

ファンタジー19ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
前世でやり込んだ乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったわたくし、カリスタ。 学園の卒業パーティーで婚約破棄を宣言されるはずが…… こんな展開、ゲームで見たことないよ!?

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop