秘密のままで、あなたと。
第三章 さよならを怖れずに、愛を信じたい
異動の話が正式に社内に広まった日、秋山結衣の世界はほんの少し、揺らいだ。
「海外事業部だって。すごい出世よね。あの若さで」
「課長、やっぱり仕事できるもん。向こうでバリバリ活躍するんじゃない?」
部署の女たちが囁き合うのを聞きながら、結衣はコーヒーを口に運ぶふりをして視線を落とした。胸の奥が、じくじくと痛む。
(いなくなるんだ、この人……私の前から)
「秋山さん、大丈夫?」
背後からかけられた声に振り向くと、そこには同期の飯田誠がいた。
「最近、元気ないからさ。何かあった?」