Love Potion
「亜蘭。あの女、帰った?」
 ふぅと息を吐き、メガネを外し、ネクタイを緩める。

「帰りましたけど。すごい態度の変わりようですね」

「あー。マジ怠い」

 自分を落ち着かせるため、目の前の珈琲を一口飲んだ。

「九条孝介、あんな女のどこが良いんだ?一回抱けば、誰でも簡単に落とせそうだけどな」

 はぁと亜蘭は溜め息をつき
「汚い言葉、やめてください。それは、あなたみたいなハイスペックな人、だからこそです。いつまでも報われない不倫を続けるより、目の前に現われた容姿も良くて、お金持ちで、妻子もいない男の方に乗り換えたいって思うでしょ?普通。あ、性格は難ありですが。初対面ではわかりませんからね」

「それって、俺のこと褒めてんの?」
 はい、と亜蘭は返事をした。

「すぐに《《終わらせて》》やる」

「まさか。美月さんの時みたいな強引な方法を使うんじゃないですよね。Love Potionってお酒を飲ませたから、なんたらこうたらって……」

「はっ?あれは美月だから使った方法。好きでもない女の身体なんて、興味ない。触れたくない」

 あんな方法じゃなくて、普通の振る舞いだけであの女を落とせる自信がある。

「本当に美月さんに事前に言わなくていいんですか?」

「あぁ」

 美月が知ったら反対しそうだから。なんだかんだで優しいし。
<そこまでしなくても……>なんて言いそうだ。

「加賀宮さんが色仕掛けで家政婦を落として、九条孝介との関係を吐かせ、その後は何事もなかったかのように捨てる作戦ですってちゃんと伝えた方が……」

 今の亜蘭の言い方、なんか引っかかるな。

「美月にバレたら、俺から説明する。それより美和(あいつ)の情報は?調べてるんだろ。家族構成とか嗜好品とか……」

 事前に情報があった方が近づきやすいからな。

「調べてますよ。これ、資料です」
 さすが長年の付き合い。仕事のできる秘書がいて良かった。

「さて、どうすっかなー」
 資料に目を通す。

 早く終わらせて美月を解放してあげたい。
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