Love Potion
 アパートに着き、部屋の前でノックをする。
 加賀宮さんは出てこない。
 
 寝てるかな?

「ごめん。私だけど!」

 ノックをしながら声をかけた。
 すると――。

「どうした?」
 扉が開き、加賀宮さんが出てきてくれた。

「具合が悪いって聞いて」
 加賀宮さんはとても怠そうだった。

「亜蘭が教えたのか。今日は帰って良いよ」

 そう言って彼は扉を締めようとした。
 なにその対応!
 呼び出したい時だけ呼び出して、あんなことして。

「ちょっと!何それ!あなたが帰れって言っても、帰らないから。都合の良い時だけ私を利用して。あなただけズルい!」

 何てこと言っちゃったんだろう。
 どうして加賀宮さんにはこんな強気なことしか。

「わかった。とりあえず、入って」

 彼は諦め、私をすんなり家の中へ入れてくれた。
 そんなに体調悪いんだ。
 
 ベッドにポスっと座ったかと思うと
「ごめん。今、美月、大変な時だろ?働きだしたばかりだし。お前も疲れてると思って。風邪もうつしたくなくて。言葉が足りなかったな」

 帰そうとしたのは、彼なりの優しさだったの?
 なのに私は……。
 彼らしくなく素直に伝えてくれたのは、本当に具合が悪いからだよね。

「私こそ、ごめんね」

「いや、いい」

 そう言えば、顔赤い。
 彼はそのままベッドに横になった。

「あー。久し振りに風邪ひいた。辛い」

 加賀宮さんでも弱音とか、吐くんだ。
 早く元気になってほしいけど、素直なところとか、そのままでいてくれればいいのに。

「ねぇ!着替えなよ。ワイシャツより、楽な格好になった方が良いよ」

 彼は相当怠いのか、仕事から帰ってきたままの上着を脱いだ状態で寝ている。

「面倒……」
 恐る恐る彼に触れる。

「熱い。体温計どこ?薬は飲んだ?」
 解熱剤飲んだなら、下がっても良いはずだけど。

「体温計はどっかに……ある。薬は飲んでない……」
 部屋を見渡すも、体温計の場所がわからない。
 薬は机の上にあるけど。

「ご飯も食べてないんでしょ?」

「うん」

「ご飯、うどん作るから待ってて。あっ、寝てても良いよ。そしたらちゃんと薬飲んでよ。スポドリも買ってきたから、水分摂って。近くに置いとくから」

 ご飯食べてから薬を飲んで、ゆっくり休んだ方が良いよね。

「わかった。てか、飯……。作ってくれんの?」
 彼はまだぼんやりと目を開けている。

「簡単なモノになっちゃうけどね。ほら、ちょっと冷たいよ」
 私は頭の下に氷枕を置いた。

「冷たっ!」
 子どものような反応に、可笑しくて笑ってしまう。

「じゃあ、ちょっと待ってて。ご飯作ってくる」

「わかった」

 私は狭いキッチンに立つ。
 そういえば、《《加賀宮さんのためだけ》》にご飯作るの初めてだ。
< 76 / 159 >

この作品をシェア

pagetop