【改訂版】満月の誘惑
いらっしゃいませ
流れ行く時代は明治。
明治六年に学制が公布され、月城柚葉はその年に生まれた。
月城家は、田畑で育てた米や野菜を、上流階級に納めていたため、立派な家を与えてもらえるなど、裕福な暮らしができている。
もちろん学校も、中学校まで当たり前のように通えた。
大学校にも通えたが、柚葉には夢がなく、家で両親の手伝いをすると決めて、大学校は行かずに中学校を卒業した。
「柚葉。働いてくれるのは嬉しいけど、嫁がなきゃ。若いうちに行かないと、もらってもらえないわよ」
そう言うお母様に、
「私は嫁がない。旦那様になる方に、月城家に入ってもらいます」
そう断言した。
月城家の子どもは私一人。
後継は当然男だと考えられているし、反対されるのも無理はない。
でも私が後継になって月城家を後世に残していくことで、長期間の安定した暮らしが保証できる。
「心配事が一つ減るのは良いことでしょ?」
「まぁ確かに。月城家は、途絶えさせてはいけない家系だからな。それも一つの手かもしれん。良いだろう。では私が連れて来る」
こうして、月城家は婿を取ることになった。
お父様が旦那様を探すと言って一ヶ月後、月城家に足を踏み入れた旦那様、佃荘司。
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