【改訂版】満月の誘惑

どこへ行かれるのですか




上流階級の人たちが口にする食材を月城家は代々納めていて、一日に一回、決まった仲介屋へ持って行く。そこでさらに選別をされ、それぞれの家へ配布される。


私たちは、その上流階級の人たちの顔を見ることはなく、間を取り持ってくれている人さえも知らない。下位の者が関われる価値もないということだ。



そんな月城家にはルーティンがあり、朝起きたらすぐにそれは始まる。


ニワトリが産んだ卵の回収、形の良いものを厳選して納めるものと家で消費するものとを分ける。


朝ごはんを食べたら畑の野菜を収穫し、卵と同様に納めるものと家で消費するものを分ける。自分たちが食べる分の形の歪な野菜は、お昼ご飯や夜ご飯にする。


夕方まで同じことを繰り返して、日が沈む頃になると、仲介屋へ納めに行って一日は終わる。




このルーティンを、今日まで欠かさず続けている。


仕事だと思っているからか、嫌になったことはなく、一年中休みなく同じことをこなしている。



月城家に婿としてきてくれた旦那様______佃荘司さんも文句一つ言わず、たった二週間で長年この家に居るかのような仕事ぶりで、我が家にも馴染んでくれている。


休みたいとか、家に帰りたいとか、そう言った願望はないのだろうか。


婿として入ってきて、肩身の狭い思いをして言いたいことも言えないなんて状況なら、私の抱えていた苦しみを取ってくれたお返しをしなければ。


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