【改訂版】満月の誘惑
荘司さんと二人で定期納入をした帰り、思い切って聞いてみることにした。
「荘司さんはご実家に帰ったり、息抜きされたりなさらなくて大丈夫ですか?もしご希望があれば、言っていただければ嬉しいです」
押し付けのように聞こえていなければ良いけど。荘司さんが望まれないのなら、月城家に荘司さんの息抜きの場を作るだけ。
「希望か。…では一つ、ある」
「何でしょう?」
「明日の夕方から明後日の夜まで、家を空けたい」
「明後日の夜まで?でしたら、その分の食事かお代金がいりますね」
「いや、何もいらん」
「え…。では、私にできることはございますか?」
「何もない。必ず帰ってくるから、待っていてくれるだけで良い」
「はい…、分かりました。ではお気をつけて」
本当はどこへ行かれるのか、聞きたかった。
お金はいらない、食事もいらない。そんなの、明後日の夜までどうやって過ごすつもりなのか。
ご実家に戻られるのであれば食事は問題ないし、ご友人に会いに行かれるのであれば、そこでご馳走になるのかも。
いろんな憶測を浮かべたけど、荘司さんの表情の重さを見て、何も聞かずに分かったと返事をするのが最善だと察した。
両親にも家を空けられることを説明して、同じようにおにぎりを持たせようとしたけど、断られていた。