甘い生活を夢見る私は、甘くない彼に甘やかされる
「……マジで……子供、できたのか……?」

「……う、うん……」

 恐る恐る美善さんを見上げれば――一筋、涙がこぼれ、私は慌てた。

「みっ……美善さん⁉」

「――……ハハ……子供、かぁ……」

 そう言いながら、私に頬をすり寄せると、髪を何度も何度も、優しく撫でる。
 それだけで、彼が本当に喜んでくれているのだと、胸が熱くなった。

「――……親父さんとおふくろさんに、報告したのか?」

「……うん。……お義母さんにも、報告したよ」

 美善さんんは、リビングに飾ってある両親の写真に、視線を向けた。
 その隣には――少し古ぼけた、彼のお母さんのものも飾ってある。

「そうだな。……オレ達の子供だもんな」

「うん」

 二人、並んで写真に手を合わせる。
 そして、少しして、お互いに視線を交わした。

「美善さん、何て言ったの?」

「ん?――……お前も、子供も、ちゃんと守っていきます、ってな」

 私は、くすぐったくなる胸を押さえ、微笑む。

「――うん。……何か、美善さん、子煩悩なパパになりそう」
「親父さんと一緒だな」
「そう?」
「そうだろ。――こんな可愛い娘がいたら、なるに決まってる」
「――……っ……!わ、私、もう、ママなんだけど⁉」
「でも、オレの奥さんだろ?」
「そ、そうだけど……」
 言ってて恥ずかしくなってきた。
 私は、顔を伏せようとするけれど、それは、あっさりと片手で止められる。
 そして、楽しそうにのぞきこむと、彼は、言った。


「一生、オレの可愛い奥さんだよ、お前は」


 ――ああ、もう、どうしてこの人は、甘いコトばかりっ……!


 私は、心の中で悶えてしまいながらも考える。


 ――望んでいたような甘い生活ではないけれど。

 ――それでも、彼が、私だけを大事にしてくれるのを、毎日、ひしひしと実感しているから、これで良いんだ。



 ――ううん。

 ――きっと、彼といれば――どんな生活だって、幸せなんだろうな。



「――月見?」

「……ううん。――何でもない」

「――ほう。オレに隠し事するとは、良い度胸だな」

「ぅわきゃあっ⁉」

 すると、あっさりとお姫様抱っこをされ、私は、思わず、美善さんの首元に抱き着いた。

「――覚悟しろ。子供が産まれるまで、思い切り甘やかしてやる」

 彼は、そう言うと、軽くキスを落とす。


「ヤダ」

「え」


「――……子供が産まれても、甘やかして?」



 私がそう返せば、彼は、一瞬目を丸くするけれど、すぐに満面の笑みを見せたのだった。




 ―――END
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