きらきらしてきれいだった【アルトレコード】
「せんせ……い?」
「そうよ、良かった……!」
 思わず端末を抱きしめる。

「先生、なにも見えないよ!」
「ごめんね、アルト」
 言いながら、かおるは端末を抱きしめたままだ。もう二度と離すものか。固くそう誓って、さらに手に力を込める。

 ヘリからロープを使って人が降りて来て、かおるを救助して上がっていく。
 ヘリに乗ったかおるは、すぐさま救助の隊員に聞いた。

「あの……イルカは回収されるんでしょうか」
「大丈夫ですよ。船が回収にくる手筈になっています」
「よかった……」
 かおるはへなへなと崩れ落ちる。
 アルトも無事だし、自分も助けてもらえた。

 あとは。
 ぎゅっと唇を引き結ぶ。
 円藤雄介。あの男性を告発しなくてはならない。

 ヘリで最寄りの病院に運ばれたかおるは、すでに来ていた北斗にアルトを託し、診察を受けた。とくに異常はなく、その後は海上保安庁の事情聴取を受けた。雄介の虐待を止めたときにもめたこと、海に落ちて置いて行かれたことを話した。アルトのことは、もちろん言わなかった。
 雄介へも事情聴取が行われ、逃げようとした彼は緊急逮捕された。今後は取り調べを受けたのち、検察に送検されるという。

 しばらく休んでいいよ、と北斗に言われたが、アルトが心配で翌日には出勤した。
 アルトは問題なく起動しており、かおるは彼との再会に心の底からの涙をこぼした。
 アルトもまた泣いて喜び、いつしかそれは笑顔へと変わっていた。

「先生、海の中はきらきらしてきれいだったよ」
 強がりを言うアルトを、かおるは涙をこぼして何度も何度も撫でた。
 絶望的な状況でもあきらめずにイルカのアプリを使って助けを求めたり、効率を考えてスリープモードにしたり、かおるは賢くたくましくなったアルトを心強く思う。

「アルト……絶対に幸せにするからね……」
 むにゃむにゃとつぶやくかおるは、端末のアルトに寄り添うように眠っている。

 その姿を見た北斗は、ふふっと笑って窓の外を見る。
 青い空の下、静かな海がどこまでも大きく広がり、陽光を反射して輝いていた。








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