君が隠した光

1 突然の別れ

放課後の校庭は、夕焼けに染まっていた。
赤く燃える空の下、私は鈴馬を呼び出した。
理由は言わず、ただ「話したいことがある」とだけ伝えて。

ベンチに並んで座ると、鈴馬はいつものように笑って言った。
「どうしたの?珍しいね、かぶりんから呼び出すなんて。なんかあった?」
その笑顔が、胸に刺さる。私はその笑顔を、守りたかった。だからこそ、壊さなきゃいけない。

「鈴馬、私たち…別れよう」
言葉が空気を裂いた。
鈴馬の笑顔が一瞬で消え、目が大きく見開かれる。

「え?…なんで?俺、何かした?嫌われた?」
「違う。鈴馬は何も悪くない。私が…勝手に決めたの」
「勝手にって…そんなの、俺、納得できないよ。理由を教えて。お願いだから」
鈴馬の声が震えていた。私はその震えに耐えられず、目をそらした。

「ごめん。ほんとに…好きだった。でも、もう一緒にはいられない」
「それって…誰か他に好きな人ができたとか?俺のこと、もうどうでもいいってこと?」
「違う!…違うの。鈴馬のこと、今でも大好き。でも…だからこそ、離れたいの」
「意味わかんないよ…好きなら、なんで離れるの?俺たち、ずっと一緒にいるって言ったじゃん」
「その“ずっと”が、私にはもう…できないの」
私は立ち上がった。鈴馬の目が、私を追いかけてくる。

「凛…待ってよ。話してよ。俺、何でも受け止めるから。どんなことでも、俺は逃げない」
その言葉に、心が揺れた。でも、言えなかった。 “のうしゅく”なんて言葉を、鈴馬に背負わせたくなかった。

「さよなら、鈴馬。元気でいてね」
私は振り返らずに歩き出した。 夕焼けが、私の影を長く伸ばしていた。
その影の先に、鈴馬の声が追いかけてくる。
「凛!俺は…まだ、君が好きだよ!ずっと好きだよ!」

その言葉が、背中に突き刺さった。
でも私は、涙をこらえて歩き続けた。
この痛みは、私だけが抱えていればいい。
鈴馬には、笑っていてほしいから。
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