君が隠した光
2 残された時間
朝、目が覚めると、世界が少しぼやけて見えた。
時計の針が読めない。数字が、形を失っていく。
「またか…」 凛は小さくつぶやいた。
最近、こういうことが増えてきた。
記憶が抜け落ちるように、日常が少しずつ崩れていく。
病院のベッドに座りながら、凛はスマホを開いた。
鈴馬との写真が並ぶフォルダ。
笑顔、笑顔、笑顔。
「全部、宝物だよ」
でも、その宝物を、彼に渡すことはできない。
渡してしまえば、彼はきっと泣く。
苦しむ。
それだけは、絶対に避けたかった。
看護師が部屋に入ってくる。
「凛ちゃん、今日は少し顔色いいね」
「そうですか?…でも、頭の中はぐちゃぐちゃです」
「無理しないでね。何かあったらすぐ呼んで」
凛は微笑んでうなずいた。
その笑顔の裏で、彼女は自分の“終わり”を静かに受け入れ始めていた。
凛はノートを開いた。
そこには、彼女が密かに書き続けていた“手紙”があった。
宛先は、楠木鈴馬。
ページをめくるたびに、凛の想いが綴られていた。
凛はその手紙を封筒に入れ、母に託した。
「私がいなくなったら、鈴馬に渡して。お願い」
母は泣きながらうなずいた。
「わかったよ。絶対に渡すからね」
その夜、凛は窓の外を見つめた。
星が瞬いていた。
「鈴馬、今もどこかで笑ってるかな」
そう思うと、胸が少しだけ温かくなった。
ベッドの横には、彼との思い出の品が並んでいた。
ペアのキーホルダー、文化祭で撮った写真、彼がくれた手紙。
それらをそっと撫でながら、凛はつぶやいた。
「ありがとう。私、幸せだったよ」
そして、凛はそっと目を閉じた。
残された時間は、もうわずかだった。
でも、彼に渡したい言葉は、確かにここにある。
それが、彼女の最後の願いだった。
時計の針が読めない。数字が、形を失っていく。
「またか…」 凛は小さくつぶやいた。
最近、こういうことが増えてきた。
記憶が抜け落ちるように、日常が少しずつ崩れていく。
病院のベッドに座りながら、凛はスマホを開いた。
鈴馬との写真が並ぶフォルダ。
笑顔、笑顔、笑顔。
「全部、宝物だよ」
でも、その宝物を、彼に渡すことはできない。
渡してしまえば、彼はきっと泣く。
苦しむ。
それだけは、絶対に避けたかった。
看護師が部屋に入ってくる。
「凛ちゃん、今日は少し顔色いいね」
「そうですか?…でも、頭の中はぐちゃぐちゃです」
「無理しないでね。何かあったらすぐ呼んで」
凛は微笑んでうなずいた。
その笑顔の裏で、彼女は自分の“終わり”を静かに受け入れ始めていた。
凛はノートを開いた。
そこには、彼女が密かに書き続けていた“手紙”があった。
宛先は、楠木鈴馬。
ページをめくるたびに、凛の想いが綴られていた。
凛はその手紙を封筒に入れ、母に託した。
「私がいなくなったら、鈴馬に渡して。お願い」
母は泣きながらうなずいた。
「わかったよ。絶対に渡すからね」
その夜、凛は窓の外を見つめた。
星が瞬いていた。
「鈴馬、今もどこかで笑ってるかな」
そう思うと、胸が少しだけ温かくなった。
ベッドの横には、彼との思い出の品が並んでいた。
ペアのキーホルダー、文化祭で撮った写真、彼がくれた手紙。
それらをそっと撫でながら、凛はつぶやいた。
「ありがとう。私、幸せだったよ」
そして、凛はそっと目を閉じた。
残された時間は、もうわずかだった。
でも、彼に渡したい言葉は、確かにここにある。
それが、彼女の最後の願いだった。