紅の基本

出会い――встреча

 煩く響く、蝉の声。黒板にチョークが当たる音。皆が下を向いて各々なにかしている様子。私はそれを他人事のように遠目で見ていた。最近、なにもやる気が起きない気がする。授業が始まって三十分。開いただけの真っ白なノートがその存在を際立たせている。早く終わらないかな、と時計の秒針を目で追う。まだこの歴史は面白くない。私は相当な近現代史好きで、特にソビエト連邦が好みである。あ、別に政治が良いとかそういうあれではない。文化が好きなのだ。勇ましい軍歌、格好の良い軍服。つまり私の憧れの宝箱であった。
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