プリンセスと氷上の勇気

6 雪祭り

 時の流れはあっという間で、とうとう今日は雪祭りの日。
 アリシアは今から最後の練習です。
 アリシアは凍った泉の真ん中から滑り出します。
 ぐんぐん加速してジャンプにチャレンジしますが――

「あぁっ!」

 やっぱりダメ。勇気を見つけたと思ったのに……まだ足りないのでしょうか。

「おしかったよ。次はきっと――」

「無理だよ、もう本番だもの……!」

 アリシアはとても落ち込んでいるみたいです。
 青い目からぽろぽろ、涙がこぼれてきました。

「アリシア……」

 はげまそうとティナが声をかけた時――ふと、空から白いつぶが落ちてきました。雪です。

「たいへん! 氷の上に雪がつもってる!」

 ティナはスコップを持って氷の上に行きました。
 すてんと転んでしまいますが、すぐに立ち上がって雪かきを始めます。

「アリシアのショー、中止になっちゃう!」

 つもらないで! といのりながら、アリシアはいっしょうけんめい雪を氷の外へ出します。

「いいよ別に!」

「よくないよ、アリシアがあんなにがんばったのに! それに、わたしも国中のみんなも、ショーを楽しみにしてるのに!」

 雪はどんどんつもっていきますが、あきらめません。

「みんな楽しみにしてないよ。だってジャンプできないもの」

「ううん、楽しみにしてる! ほら見て!」

 悲しそうな顔で言うアリシアですが、そんなことはありません。
 だって――たくさんの人がスコップを持って、走ってきたのですから。
 これだけいれば、雪がつもるはやさにも負けません!

「みんなアリシアのショーが楽しみなんだよ!」

「アリシアちゃん、がんばって!」

「雪に負けるなー!」

 みんなせっせと雪をどけながらそう言います。
 アリシアの心がぽっとあったかくなりました。

「勇気は見つけられなくてごめん! でもあきらめなかったらできるって信じてるよ!」

 ショーがしたいってわくわくが、ぽっ。
 みんなの応援が、ぽっ。
 心があったまって、おくから何かがわきあがってきます。
 もしかして……これが、勇気でしょうか。

「ティナ! 私、飛べる気がする!」

「うん、アリシアならぜったい飛べる!」

 雪がやんだら、とうとう本番。でも、もう怖くありません。
 だってアリシアの心には、2人で見つけた勇気がありますから。
< 6 / 8 >

この作品をシェア

pagetop