満月に引き寄せられた恋〜雪花姫とツンデレ副社長〜
米袋と桐箱のデザイン決定まであと二週間。
倉本さんの退社後、デザイン課に戻り、机のノートパソコンに電源を入れる。

自分なりにリサーチをして、これかもってアイデアが浮かんだ。でも自信がない私は、スーパーでお米の袋を見るたび、比較をしてしまう。

やはりポリ素材袋のメインカラーは、ほとんどが白。純白なお米と清潔感を連想させるには一番効果のある色。もう一つは昔からあるクラフト紙を使用した茶色。

私のオリジナルのデザインは、それを覆すライトブルー/パステルベビーブルーという薄い水色ーーまさに精霊雪花姫を彷彿させる透明感のある水色だった。

でも他のデザインを見るたび不安に駆られる。

もし却下されたら? もう時間がないのに。
一層のこと白ベースで他社と同じ感じにする? 

悩みながらパソコンのスクリーンに生産地の秘境写真を映し出す。ほとんどが夏に撮影されたものなんだろう。山々の木々が美しい緑色だから。

これじゃ、上手くイメージできないよ……。

思わず俯き深くため息をついた時、ポンポンと頭を触れられた。驚いて顔を上げると、机の端に寄りかかった副社長がいる。


「熊女、何しけた顔してる?」


そう言いながらパソコンのスクリーンを覗き込む。

ちょ、ちょっと、近いんだけど。


「えっ、えーと、もう一度イメージングしたくて、産地の写真を見ているんですけど、思うような写真がなくて……」

「ちょっと待ってろ」


そう言いながらおもむろに背後に立ち、そっと右手を私の手とマウスにかぶせた。ふわっと彼のコロンの香りが鼻を(かす)める。
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