クールな同期は、私にだけ甘い。
第3話 動き出した心
『大丈夫。桜井の努力は、きっと報われるよ』
あの昼休み。食堂で萩原くんがくれた言葉が、冷え切っていた私の心の奥に、じんわりと温かい光を灯してくれた。
まるで暗闇に、一筋の光明が差したようだ。
彼がアドバイスしてくれた「クライアントの言葉の裏にある、本当に求めているもの」という視点。
それを意識した途端、まるで濃い霧がすっと晴れるように、停滞していたウェブサイトのデザイン案に、確かな光が差し込み始めた。
単にデザインを練り直すだけじゃない。
新商品のターゲット層や、彼らがどんな瞬間に「爽快感」を感じ、「繋がり」を求めるのか。
その背景にある顧客の感情や体験を想像する作業は、これまで私がどこか置き去りにしてきた部分だったんだ。
スケッチブックにアイデアを書きつけ、パソコン上でレイアウトを試す日々。
時には徹夜に近い作業になることもあったけれど、以前のような焦りやどん底に突き落とされるような絶望感はもうない。
むしろ、一つ、また一つと形になっていくデザインを見るたびに、思わず小さく「よし」と呟き、静かに拳を握りしめる。
胸の奥からは、確かな喜びが湧き上がってくるのを感じた。