クールな同期は、私にだけ甘い。
第5話 新たな試練
新規事業創出プロジェクトが、いよいよ本格的に始まった。
社内報ウェブ版リニューアルポスターデザインを成功させた私は、その実績が評価され、萩原くんのチームに加わることになったのだ。
プロジェクトのテーマは「デジタル技術を活用した、地域活性化ビジネス」
斬新なアイデアを模索する日々は、時に激しく、濃密だった。
連日深夜まで議論を重ね、時には意見がぶつかり、火花を散らすこともあった。それでも、私と萩原くんの間には、確かな信頼関係が築かれていくのを感じた。
萩原くんは、時に厳しい言葉も口にするけれど、その奥に私の成長を願う真摯な眼差しがあることを、私はもう知っていた。
だが、現実は甘くない。どんなに斬新なアイデアが生まれても、それを具体的なビジネスモデルに落とし込む段階で、私たちは何度も壁にぶつかった。
特に、ウェブサイトの画面設計――ユーザーが実際に触れる部分の見た目や操作性――を担当する私は、試行錯誤の連続だった。
先日、完成したばかりの試作版ウェブサイトを、実際のユーザーに試してもらう“ユーザーテスト”を実施したのだが、その結果はあまりにも無慈悲だった。
『分かりにくい。一体何ができるサイトなのか、全く伝わってこない』
利用者からの生の声、つまりフィードバックが、私の目の前に突きつけられる。
ノートパソコンの画面には、先輩からの赤字だらけの改善点が。それはまるで私自身、私の努力の全てを否定するかのようだった。
胃のあたりがキリキリと締めつけられ、体の芯から冷えていくような感覚に、私は顔を伏せた。
頬にかかる髪がうっとうしい。鏡を見なくとも、自分の顔はきっと疲労で歪んでいるだろうと分かった。
「せっかく頑張ったのに。やっぱり、私にはこんな大きなプロジェクトなんて、無理なんだ……」
ついにこらえきれなくなり、私は静かに大粒の涙をポタポタとデスクに落とした。
嗚咽が漏れ、肩がわずかに震える。
もうダメだ……全てを投げ出したくなった、そのとき――。