クールな同期は、私にだけ甘い。
第8話 始まりの場所
新しい挑戦は、確かに始まっていた。
私たちが情熱を注いだ新規事業のデジタルプラットフォームは、地方の観光活性化に大きく貢献し、順調な滑り出しを見せている。
その成功は社内でも大きく報じられ、私のデザイン部署と蓮の企画部署は、今後も密に連携していくことが決まった。
「ほんと、うまくいって良かったね。蓮」
「ああ」
私たちの絆も仕事の成果とともに、一層強固になった。苦しかったスランプを完全に乗り越えた私は、失敗を恐れ周囲の評価に怯えていたあの頃とは違う。
不安は消え去り、内側から湧き上がる確かな自信が、私自身を輝かせていた。
新たな企画会議の場でも、私は躊躇なく意見を述べられるようになった。
「この機能は、ターゲット層の心に響くはずです。ユーザーテストの結果からも、その傾向は明らかでした」
発言には説得力が増し、私の提案するデザインはどれも見る人の心を惹きつけた。
私のデザイン力は、社内でも高く評価され、「桜井さんが手掛けると、作品に命が宿るようだ」と、先輩や同僚たちから言われることも増えた。
それは、蓮が私に示してくれた揺るぎない信頼と、隣で支え続けてくれたおかげだ。
彼がいなければ、今の私はきっとここにはいないだろう。
◇
ある日の午後。カフェスペースで打ち合わせを終え、自席に戻ろうとしたとき、企画部のエースである星野美咲さんが、私のデスクにやって来た。