森の魔法の秘密
 森のはずれに、小さな小屋がありました。そこに住んでいたのは、クマのクゥくんとウサギのピョンちゃんです。


ある日、クゥくんは森の中から不思議な音 を 聞きました。
「ピョンちゃん、聞こえる?キラキラ、シャラシャラって音…」
ピョンちゃんは大きな耳を立てて聞きました。
「本当だね!あの音、前にもどこかで聞いたことがあるような…」


クゥくんは机の引き出しから、おじいさんに昔もらった古い地図を取り出しました。地図には「聞こえないと 見えない 魔法の泉」と 書いてありました。

「この地図、おじいさんが『必要な時がきたら 開けなさい』って言ってたんだ」
ピョンちゃんは不思議そうな顔をしました。
「でも、どうして今日、、、その音が聞こえたのかな?」



そのとき、窓の外で金色の葉っぱがひらひらと舞っていました。普通の葉っぱとちがって、夜なのに光っていました。

「この 葉っぱを 追い掛けてみよう!」



次の朝、クゥくんとピョンちゃんは地図を持って森に入りました。金色の葉っぱは見付かりませんでしたが、地図に描かれた道を進みます。

途中、森の中で迷子になったキツネの子どもを 見付けました。
「おかあさんがどこかに行っちゃったの…」
クゥくんは 言いました。
「僕たちと一緒に行こう。きっと、 お母さんも見付かるよ」


キツネの子どもコンくんは、首に 不思議な 青い石のペンダントをかけていました。
「これはおかあさんからもらったの。『困った時はこの石を握りしめて』って」
その石は 時々、微かに 光るのでした。


3人が歩いていると、森はだんだん暗くなってきました。木々が密集し、日光が ほとんど届かなくなりました。

「こわいよ…」
とピョンちゃんが 言ったとき、コンくんの 青い石が不意に明るく光りました。すると、木々の間から あの「キラキラ、シャラシャラ」という音が聞こえてきたのです。

「あの音のほうに行こう!」



音のするほうに進むと 、小さな空き地に出ました。そこには フクロウのような、にんげんのような、不思議な 老人が座っていました。

「やあ、待っていたよ」
と 老人は いいました。
クゥくんたちはびっくり。
「僕たちを 知っているの?」

「もちろん。クゥくん、それは 君の おじいさんの だね。そしてコンくん、その 青い石は『呼び石』。持ち主が困った時に、助けを呼ぶ石なんだ」

老人は 続けました。
「森の奥にある魔法の泉が、どんどん力を 失っているんだ。それで、金色の 葉を風に乗せて、助けを求めていたんだよ」


クゥくんは 思い出しました。
「だから地図が必要な時がきたって、おじいさんは 言ったんだ!」

老人は 頷きました。
「泉の力が弱まると、森の命も 弱まっていく。だからコンくんのお母さんも姿を消してしまったんだ」


老人の案内で 3人は 深い森の中へ 進みました。すると、小さな湖が ありました。湖の水は 蒼く輝いていましたが、端のほうは 濁って暗くなっていました。

「ここが 魔法の泉につながる湖だよ」
老人が言いました。

すると、湖の 真ん中から水が盛り上がり、美しい水の精霊が現れました。
「よく 来てくれました」
と精霊は言いました。
「森の命が危ないのです」

精霊は 説明しました。森の命を支える魔法の 泉が、どんどん力を失っているのだと。
「それは、誰かが泉の水を盗んでいるからなの」

「誰が?」
とピョンちゃんが聞きました。
「それがわからない。でも、そのひとは 魔法の水を使って、何か 悪いことをしようとしているわ」

コンくんの青い石がまた光りました。
「お母さんも、この水を守ろうとして 捕まってしまったの?」
精霊は頷きました。

「でも、どうやって泉を 守ればいいの?」
とクゥくんが聞きました。



そのとき、遠くからドラムの音が聞こえてきました。
「ドンドン、ドンドン」
という重い音です。

精霊の顔が曇りました。
「あの音…マムル王の音だわ」



精霊に教えられた通り、3人はドラムの音が する方向へ進みました。道なき道を進むと、大きな岩山があらわれました。岩山の中腹には、大きな城がありました。

「マムル王の城よ」
と精霊の声が聞こえました。精霊は水のたまになって、クゥくんたちについてきていたのです。



城のまわりには、たくさんの動物たちが閉じ込められていました。なかには、コンくんのお母さんの姿も!

「おかあさん!」
コンくんが叫びました。
キツネのお母さんは 悲しそうな顔で、檻の中からコンくんを見ていました。

「どうやって助ければいいの?」


そのとき、クゥくんは地図を もう一度よく見ました。そこには小さな文字で「捕らわれたものを救うには、三つの鍵が必要」と書いてありました。

「三つの鍵…」
精霊が 言いました。
「最初の 鍵は、クゥくんの おじいさんから受け継いだ『勇気』二つ目の鍵は、コンくんの『呼び石』…」

「じゃあ、三つ目の鍵は?」
とピョンちゃんが 聞きました。



そのとき、マムル王があらわれました。大きな黒いマントを着た巨人のようでした。
「誰だ?わしの城にきたのは」
マムル王は怒りました。
「わしの魔法の水を取り戻しにきたのか。無駄だ!わしは不老不死の薬を作るのに、あと少しで完成するのだ」


マムルおうは大きなガラスの容器を指さしました。そこには 蒼く光る水がみたされていました。

「もし、その水を 全部使ってしまったら森は どうなるの?」
とクゥくんが 聞きました。
「知ったことか!わしさえ永遠に生きられれば」

マムル王が杖を振り上げると、3人は動けなくなりました。


そのときです。ピョンちゃんの ポケットから、昨日拾った金色の葉っぱが飛び出しました。葉っぱは 光輝きマムル王の魔法を打ち消したのです。

「これが三つ目の鍵!」
精霊が叫びました。
「森の『希望』の葉!」



クゥくんの勇気、コンくんの呼び石、そして ピョンちゃんの 希望の葉。三つが 一緒に輝きはじめました。

マムル王は光を避けようとしましたが、光は 強くなるばかり。やがて、ガラスの容器が割れて、魔法の水が解放されました。



水は流れだし、魔法の泉へともどっていきました。マムル王の 魔法はとけ、捕らえられいた どうぶつたちは じゆうに なりました。

コンくんとお母さんは再会し、抱きしめあいました。
「コンくん、よく頑張ったね」

森全体に生命力が戻りはじめ、木々は緑をとりもどし、花が咲きはじめました。



老人は 満足そうに微笑みました。
「クゥくん、おじいさんから受け継いだ勇気を しっかりつかったね。ピョンちゃん、希望を 捨てなかったね。そしてコンくん、困ったときに 助けを求める勇気をもっていたね」

精霊はいいました。
「マムル王も、森の住人のひとり。永遠に生きたいと思うのは、寂しかったからかもしれないわ」



マムル王は小さくまるくなって、泣いていました。
「わしはただ…永遠に森と一緒にいたかった だけなのに…」

クゥくんは いいました。
「永遠に生きなくても、みんなで 森を守っていけば、森は永遠につづくよ」

マムル王は初めて微笑みました。
「本当だな。わしも森を 守る手伝いをするよ」



こうして、魔法の森の秘密はまもられ、みんなは幸せに暮らしました。

そして、ときどき、森のなかから「キラキラ、シャラシャラ」という美しい音がきこえてくるのでした。それは魔法の泉が、森の平和を祝う 音なのです。






















































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