答え合わせ
残念ながら、才能がない者はこの世界の裏方になる。

表に出ることは殆どない。

学生の時にそれを知った。

諦めなかった。

夢は、努力すればいつか必ず叶うって信じていたから。

才能があるとかないとか、そんなの諦める理由にならないから。



私は今、スポットライトを当てる側だ。

カメラ、音を拾うマイク、台本。

照明。


「先輩って、女優志望だったんですよねー?」

休憩時間。

照明の調整をしていると、入りたての人懐っこい後輩が、そう聞いてきた。

「うん、そうだよ」

「…辛くないんですか?」

“才能に押し潰されたのに、それを間近で見るのって、辛いに決まってる”

目で語ってきて、なんとなく質問の意図がわかった。


「まあ、辛いっちゃあ辛いよ?」

“才能っていいなぁ”


「こうやって“いい演技”を見る度に、ああ、自分は才能がなかったんだなーって…。胸がギューって締め付けられる」

“私もあんな風に輝けたら”


「でも、今の仕事は照らすことだから」

「後ろから支えてスポットライトを当てるのも、意外と楽しいじゃん?」


「私は、今の私に満足してる」
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