絆の光は未来へ

回復の兆しと残る課題

浴室での出来事から数週間が経ち、あゆかの回復は目覚ましいものがあった。光希の献身的な支えと、蓮の変わらぬ励まし、そして何よりもあゆか自身の強い意志が、その原動力となっていた。

「あゆかさん、今日のバランス練習、とても安定していましたよ!」

理学療法士の声が、リハビリ室に響く。あゆかは、平行棒につかまりながらも、以前よりはるかにスムーズに足を進めていた。

一時は全く力が入らなかった左手も、細かい作業はまだ難しいものの、少しずつ握力が戻り、物を掴むことができるようになっていた。

光希は、毎週のリハビリの記録であゆかの進捗を確認していた。主治医としての冷静な視点と、一人の人間としての温かい眼差しで、彼女のデータを見つめる。

「高次脳機能障害の評価も、改善傾向にあります。特に、記憶力と注意力のスコアが向上しており、新しいリハビリの内容も以前より早く習得できるようになりました」

担当医が報告する内容に、光希は安堵のため息をついた。かつては、言葉を理解するのに時間がかかり、指示を忘れてしまうこともあったが、今はしっかりと話を聞き、状況を把握できる。

感情の不安定さも徐々に落ち着き、以前の明るいあゆかに近づいていた。
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