絆の光は未来へ

夜のICU〜命の音


蓮の心配した表情を背に、光希は医局を後にした。右腕に刺さった点滴…。点滴スタンドをカラカラと押しながら、彼の足は自然とICUへと向かっていた。

もう一度、あゆかのそばに行きたかった。彼女の手を握りたかった。

ICUの廊下は、日中よりいくらか静けさを取り戻していた。面会時間も終わり、警備員が巡回する音が聞こえるだけだ。光希は、昨夜と同じようにカードキーをかざし、静かに扉を開けた。

ICUに入ると、夜勤の看護師が振り返った。光希の右腕に刺さった点滴を見て、一瞬驚いたような表情を見せたが、何も言わずに静かに頷いた。

医師が自分に点滴をすることは珍しい、それで彼女は光希の憔悴した様子を心配そうに見つめていた。

あゆかのベッドは、昨夜と変わらずそこにあり、規則的な機械音と共に、かすかな命の気配を伝えていた。彼女の顔色は、相変わらず蒼白で、意識が戻る兆しは見えない。

光希は、あゆかのそばの椅子にそっと腰を下ろし、点滴スタンドを近くに置くと、再びその手を握った。ひんやりとした皮膚の下に、確かに脈打つ鼓動がある。

(あゆか……)

「彼女には両親がいなかった。交通事故であゆかだけが助かったのだ。でも、光希の両親はあゆかを実の娘のように可愛がり、光希と共に育ててくれた。」

戸籍上は養子縁組こそしなかったが、家族同然、いや、それ以上に大切な存在だった。
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