絆の光は未来へ
光希は、再びノートパソコンに向かい、鬼気迫る表情で検索窓にキーワードを打ち込んでいく。「自己免疫疾患」「神経症状」「意識障害」「非典型」。いくつもの論文がヒットし、彼はその中から、ごく限られた症例報告を読み込んだ。
そして、ついに、ある論文にたどり着いた。それは、ごく少数の患者に発症した「抗NMDA受容体抗体脳炎(Anti-NMDA Receptor Encephalitis)」という疾患に関するものだった。この病気は、自己の免疫が脳の神経細胞にあるNMDA受容体を攻撃することで、精神症状、痙攣、意識障害、そして自律神経の異常による臓器不全を引き起こす、極めて稀な自己免疫性脳炎だった。ウイルス感染をきっかけに発症することもあり、特に若年女性に多く見られる。
「これだ……これに違いない!」

光希の心臓が激しく高鳴った。あゆかの全ての症状が、この疾患のパズルのピースに完璧に当てはまる。意識障害、呼吸の不安定さ、そして臓器不全。初期に風邪のような症状があったことも、ウイルス感染が引き金になったとすれば説明がつく。
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