絆の光は未来へ

絶望と新たな仮説

光希の焦燥は募るばかりだった。免疫抑制療法は臓器不全の悪化を食い止めるには貢献しているものの、あゆかの意識は戻らず、バイタルも安定しない。ICUの担当医や、わざわざ来てくれた専門医でさえ、明確な打開策を見出せずにいた。病室の白い壁と、機械的な音が、光希の心を締め付ける。

「何か、見落としているんじゃないのか……?」

光希は、あゆかの手を握りしめ、目を閉じた。これまでに読み漁った膨大な論文の記述が、頭の中で渦巻く。

稀な自己免疫疾患、特定のウイルス感染、若年女性、非典型的な臓器不全……。しかし、そこから先が見えない。

ふと、光希の脳裏に、全く異なる分野の知識がよぎった。それは、研修医のローテーションで回った、意外な診療科での経験だった。

「もしかしたら……神経系の異常が、根本的な原因になっているんじゃないか?」

彼は、自分の仮説に驚いた。臓器不全は、単なる自己免疫反応の結果ではなく、脳や神経が何らかの形で損傷を受け、それが全身の臓器に影響を及ぼしている可能性。稀な自己免疫疾患の中には、神経症状を伴うものも存在することは知っていた。しかし、あゆかには、明確な神経学的所見が出ていなかった。

それでも、光希の直感が叫んでいた。この膠着状態を打ち破るには、これまでの常識にとらわれない視点が必要だ。彼はすぐに、その仮説を裏付けるための新たな文献を探し始めた。
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