深夜13時の夜行バス


”悲恋坂”――――


初めて聞く名前だ。
確かにこの土地はさっきからゆるやかながら坂がずっと続いている。
歩くと結婚大変そうだ。

「今はこの名前が使われてるかどうか分からないし、私も詳しい意味までも知りませんが
何でも百年ぐらい前、のっぴきならない恋仲にあった男女がここで心中したとか何とか。ここで事故に遭った作業員たちはその呪いだ!とか何とか言ってたらしいですが呪いなんてねぇ」運転手さんはハンドルを握りながら苦笑。

「のっぴきならない?心中?」
益々初耳だ。

「何せ百年も昔の話ですからね、嘘かホントか分かりませんし、のっぴきならない恋仲ってのもよく分かりませんが、大方不倫ですかねぇ。一緒になれないと踏んだ二人がここで心中したとか?」
運転手さんの話は曖昧だ。
それでも少しの収穫になるかもしれない。
私はお財布から例の乗車券を取り出した。
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