五妃伝 ~玉座に咲く愛~
紫煙は一瞬、戸惑った。

だが、やがて落ち着いた声で答える。

「おりません。私には――最初から、妃になる覚悟だけを持ってここへ参りました。」

その目はまっすぐで、迷いがなかった。

玄曜は、静かにうなずく。

そして次に、門冬華の前に歩み寄る。

「冬華。おまえにも同じ質問をする。おまえに、男はいるか?」

玄曜の問いに、門冬華は一拍置いて、冷ややかに答えた。

「――いいえ。」

短く、凛とした声だった。

だが、玄曜の目は鋭く光り、次の瞬間、口を開いた。

「嘘つけ。おまえ、男いるだろ。」

その場にいた家臣たちがざわつき始めた。

「まさか門家の娘が……」

「いやまさか、そんなこと……」

「でも、あの態度……」

冬華は顔色一つ変えずに返す。

「恐れながら、私の姿が美しいゆえにそう申されるのなら、お間違いかと。」
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