この手に愛と真実を〜クールな検事の一途な想い〜【書籍化】
「朝比奈さん!」
エントランスを出たところで呼び止められ、礼央はゆっくりと振り返る。
真っ白な半袖ブラウスと紺色のスカート姿の凜香が、タタッと駆け寄って来た。
「あの、大丈夫でしたか?」
矢島たちに連れて行かれる黒岩のうしろ姿に目をやり、心配そうに聞いてくる。
「ああ、君のおかげで助かった。ありがとう」
「いえ、私はなにも」
「いや、今回のことは全て君の助けがあってこそだった」
「そんな……。社長の鮎川も、お礼を申しておりました。弊社のために尽力いただき、本当にありがとうございました」
「こちらこそ。それじゃあ」
「はい、失礼いたします」
両手を揃えてお辞儀をする凜香にひとつ頷いてから、礼央は背を向けて歩き出す。
おととい、凜香は無事に自宅マンションへと帰り、礼央の隣の部屋は空き部屋に戻った。
(終わったな、なにもかも)
事件が解決へと大きく動いた今、もはや凜香との接点もなくなった。
ほんの少し心に広がる虚無感は、おそらく事件に対して肩の荷が下りたせいだろう。
礼央はそう自分に言い聞かせていた。
エントランスを出たところで呼び止められ、礼央はゆっくりと振り返る。
真っ白な半袖ブラウスと紺色のスカート姿の凜香が、タタッと駆け寄って来た。
「あの、大丈夫でしたか?」
矢島たちに連れて行かれる黒岩のうしろ姿に目をやり、心配そうに聞いてくる。
「ああ、君のおかげで助かった。ありがとう」
「いえ、私はなにも」
「いや、今回のことは全て君の助けがあってこそだった」
「そんな……。社長の鮎川も、お礼を申しておりました。弊社のために尽力いただき、本当にありがとうございました」
「こちらこそ。それじゃあ」
「はい、失礼いたします」
両手を揃えてお辞儀をする凜香にひとつ頷いてから、礼央は背を向けて歩き出す。
おととい、凜香は無事に自宅マンションへと帰り、礼央の隣の部屋は空き部屋に戻った。
(終わったな、なにもかも)
事件が解決へと大きく動いた今、もはや凜香との接点もなくなった。
ほんの少し心に広がる虚無感は、おそらく事件に対して肩の荷が下りたせいだろう。
礼央はそう自分に言い聞かせていた。