あの噂に隠された運命に涙する
だけど、おとなしくなっても、ドラゴンさんたちの気性は激しいみたい。
戦いは何とか、とどまってくれたけれど、上空で牽制し合っている。

「芽衣様のボディーガード、パート1だ!」
「芽衣様のボディーガード、パート2です!」
「芽衣様のボディーガード、パート3……!」

大声で叫ぶ三体のドラゴンさんたちから、底知れないほどの圧力を感じた。
奇跡で解決したこと、絶対に根に持っている。

「はあっ……」

足取りが重いのは、帰りが遅くなっただけではない。
上空で飛行するドラゴンさんたちが、家までついてくるんじゃないのかという不安。
それが、ぬかるみのようにまとわりつく。

『おや? 空き缶がポイ捨てされておりますよ』

スポナビさんは何気ない調子で、のんきなメッセージを浮かばせる。
視線を向けると、目の前に空き缶が捨てられていた。
誰かがポイ捨てしたのかな。
近くには自動販売機があり、その横にはリサイクルボックスが置いてある。
あたしは慌てて、空き缶を拾おうとしたんだけど。

「うわあっーー!?」

その瞬間、視界に映ったのは恐ろしい光景だった。
炎と氷と闇のブレスが混ざり合って、空き缶に向けて放たれたのだ。

「空き缶ごときが、芽衣様の行く手を阻んでいるんじゃねー!!」
「愚かにも、ほどがありますね」
「……空き缶、くたばれ、くたばれ」

まさに、絶望感がピークに達した瞬間だった。
これから進もうとしていた道は、まるで地割れを起こしたように巨大な亀裂が入っている。
このままでは、現実世界でも大惨事になってしまうだろう。

「このままだと、大変なことになるんじゃ……」

突然のブレスに驚いた有村くんが、目をぱちぱちと瞬かせる。
すると、スポナビさんの謎の早口イベントメッセージが飛び出してきた。

『はいはい。こちら、ドラゴン様に関する苦情や意見の相談窓口です。ふむふむ。今度は、郁斗様が救いを求めていると! 芽衣様に奇跡を願っているのですね! はい、分かりました。では、芽衣様、以下略で!』
「以下略って……なに!?」

結局、あたしは二度目の『運命の女神』の機能を使う羽目になってしまったんだ。
< 72 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop