彼が甘いエールをくれたから
§1.背負った期待
広告代理店を運営する株式会社アークライン。
私、忽那知友里はこの会社で働く入社五年目の社員だ。
午前九時、ガラス張りのオフィスにはやわらかな陽が差し込んでいる。
コーヒーマシンから漂うほろ苦い香りに包まれながら誰かの笑い声が響き渡る、今朝もそんな心地よい朝だった。
いつものようにパソコンでメールのチェックをしていると、上司である部長から社内メールが届いた。
驚くことにそこには、新規クライアント案件チームのサブリーダーに私が選ばれたという内容が書かれていた。
「知友里さん、すごいじゃないですか!」
私のデスクまで来て声をかけてきたのは、一年後輩にあたる加山さんだ。
彼女はとても仕事が早くてセンスがいい。そして明るい性格なため、社内の雰囲気をよくしてくれている。
「私もメンバーに選ばれたので、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ。加山さんがいてくれたら百人力だよ」
「そんなことないですよ。知友里さんが優秀だからサブリーダーに抜擢されたんじゃないですか!」
彼女に悪気がないのはわかっている。だけどその一言が、背中に重さとなってのしかかった。
苦笑いを浮かべて小さく溜め息を吐きだす。幸い、加山さんはそれに気づかなかったみたいだ。
私、忽那知友里はこの会社で働く入社五年目の社員だ。
午前九時、ガラス張りのオフィスにはやわらかな陽が差し込んでいる。
コーヒーマシンから漂うほろ苦い香りに包まれながら誰かの笑い声が響き渡る、今朝もそんな心地よい朝だった。
いつものようにパソコンでメールのチェックをしていると、上司である部長から社内メールが届いた。
驚くことにそこには、新規クライアント案件チームのサブリーダーに私が選ばれたという内容が書かれていた。
「知友里さん、すごいじゃないですか!」
私のデスクまで来て声をかけてきたのは、一年後輩にあたる加山さんだ。
彼女はとても仕事が早くてセンスがいい。そして明るい性格なため、社内の雰囲気をよくしてくれている。
「私もメンバーに選ばれたので、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ。加山さんがいてくれたら百人力だよ」
「そんなことないですよ。知友里さんが優秀だからサブリーダーに抜擢されたんじゃないですか!」
彼女に悪気がないのはわかっている。だけどその一言が、背中に重さとなってのしかかった。
苦笑いを浮かべて小さく溜め息を吐きだす。幸い、加山さんはそれに気づかなかったみたいだ。
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