これは王命です〜最期の願いなのです……抱いてください〜
サラは遂にその時がきたのだと悟った。
万が一のことが起こらないように、ここへ連れてこられたのだろう。
この国で最高の魔力量をもつカイル魔術師団長は、その力を求められて他国へ呼ばれることも多いと聞いている。

「うーん、僕、あんまりこういう説明苦手なんだけどね、サラ嬢、君の魔力は貴重だ。それで、こういう時に酷なことを言うけど、君の亡きあと、君の魔力を提供してもらえないかな?」

「魔力を……?」

サラは、とある文献の内容を思い出した。
亡くなった直後は、魔力がまだその身体に宿っている。その魔力を、病気で魔力不足症になったものに提供することで、病気を治すことができる。
そんなの黙ってすればいいのに、わざわざ同意を得ようとするなんて、カイル魔術師団長様は律儀な人だなとサラは思った。

「どうぞ、私の魔力でお役に立てるならお好きになさってください。お尋ねくださるなんて、カイル様は真面目な方ですね」


にこにことしていたカイルの顔つきが急に険しくなり、サラを食い入るように見つめている。

カイルの足元をみていたサラはその表情の変化に気づかない。

「なるべく新鮮なうちがよくて…生きているうちでも提供できる?」


サラは言われた意味が分からずに、答えることができなかった。

生きているうちにということは、痛みを伴うのかもしれない。


「はは!ごめんごめん、こわがらせちゃったね、魔力は血液に多く含まれているんだけど……ねぇ、サラ嬢、その瞳……すごい魔力量だ。きっとそこから多くの魔力を抽出して、多くの病気の人を救えるはずだ。二度と見ることが出来なくなるけど、その瞳を提供してくれる?」


「カイル様、私は……この目のせいで、ずっと苦しんできました。母も、乳母も私が命を奪ったのです……それなのにのうのうと生きていて……
でも、陛下やリシャール国の皆さんには感謝しています。こんな恐ろしい私なんかを、今まで殺さずに育ててくださったのですから。感謝しかありまえん。ですから、もしも、少しでも誰かの命を救えるのなら、カイル様のお好きになさってください。ただ……最後にアベル様を……いいえ、なんでもありません。できれば痛くないといいのですけれど」


ボロボロと堪えていた感情が溢れでるように、大粒の涙が頬をつたう。

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