すべての花へそして君へ①

キタ!生みの親VS育ての親


「それでね? この人ったら社を開けた途端なんて言ったと思う?」


 一頻り泣いたわたしたちは、流石にこんな顔じゃまだ会場に行けないね……ってことになり。


「あれでしょ。お父さんのことだから、お母さんのことが大好きだー! とかじゃないの?」

「え。なんでわかったの?」

「あなたが単純だからよ」

「そうそう」


 テーブルの上に置いてあったスイーツボックスに手を伸ばしながら、互いの『奪還』についての話をしていた。たしは話し終わったから、今は母の番。


「でも、これでもう本当に終わったんだね。……よかった。諦めずにいて」


 そう零す父に、母もわたしも小さく笑った。けれどそれも、ほんの一瞬。すぐにニイッと歯を見せて意地悪く笑う。


「でもお父さん。これからが多分大変だよ?」


 申し訳ないけど、わたしのことを好いてくれた人がたくさんいるからねー。今からいろいろ、()()()()と思うよ。


「お母さんはわたしがバッチリ庇ってあげるから安心してね?」

「あら! 心強いわ」

「あおい俺も! 俺もお!!!!」

「まあ頑張れや」

「頑張りなさい」

「どうしてこうも、うちの女性は強いのか……」


 がっくしと。すっかり肩を落として落ち込む父に、二人してクスッとまた笑い合う。それが本当におかしくって。それでいてあったかくって……。


「しょうがないから助けてあげよう! あおいさんに任せなさ~い!」


 初めから気持ちは決まってるからね。わたしは、これからも大事な人たちは、自分の手で守っていきたいんだ。


< 120 / 422 >

この作品をシェア

pagetop