すべての花へそして君へ①
――ドスッ!
「ぐはっ!」
「よくもチクってくれましたねえ。ええ?」
一発蹴りをお見舞いしたあと理事長を足蹴にし、ぐりぐりと頭を踏み潰していると、困惑したような声で呼び止められた。相手は、ミズカさんとヒイノさんだ。
「あ。いつもおいしい野菜ありがとうございます」
そんな世間話をしつつ、オレの足はもちろん理事長をバッチリ踏み潰している。それを必死になって止めに入ろうとしない辺り、理事長の扱いを理解したんだろう。流石だ。
「か、海棠さんと話していたら、いきなり視界からいなくなって驚いたわ」
「ひなたくん。強くなったな~」
「おかげさまで」
そんな会話をしている最中も、オレの下からは唸り声が聞こえている。この人のせいで何もかもが狂ってしまったかと思うと、本気で何度もため息が落ちた。
「はあ……。おかげで計画が台無しになっちゃったんですけど」
「で、でも、いい感じになったでしょ……?」
「ええ、そうですね。未だに、信じられません……、よっ」
ぐりぐりと。踏みつける足に体重を掛け、イライラをぶつける。ぶつけて……ぶつけて。ぶつけたって、何にもなりはしないのに。ただ……思い知るだけだ。
「もう、どうしてくれるんですか。ほんと夢みたいなんですけど」
その夢が、現実になってしまったことに。捻くれまくった、自分の性格に。最低なことをした、させた、自分の不甲斐なさに。
「どうしてくれるんですか。みんなして……。ほんと、ムカつくぐらいやさしすぎでしょ」
それさえも、丸ごと許してくれる。異常なまでの、みんなのやさしさに。
「っ、それは、ね、日向くん。君が何よりもやさしいから――痛いっ! そろそろ痛い!」
どうやらもう限界みたいだ。しょうがないから、そっと足を退けてあげた。
「なんでこう……オレの駒たちは最後の最後で裏切るんですかね」
「……それは、何よりも君に幸せになって欲しかったからだよ。私はただ、月雪くんに手を貸しただけだから」
「そうですね。ほんと、余計なことしてくれてありがとうございます」
「ははっ。お礼が聞けるなんてね。いつも『ごめんなさい』だったから嬉しいよ」
そんなことを言う理事長に、思わず目を見開く。まさか、そんな風に思われてるとは。……足蹴にしたのに。
驚いているオレを見て本当に嬉しそうに頬を緩めた理事長は、どうやら花咲さんとは話のキリがよかったらしく、そのまま違う人のところへと向かっていった。……いいのかな。背中、バッチリオレの靴の跡が付いてるんだけど。