すべての花へそして君へ①
「……さてと」
おもむろにビニール袋へ手を突っ込み、爪楊枝が刺さっているものを一つだけ口に運ぶ。
「んま」
……でも、ヤバいな。食うんじゃなかった。余計に腹減るわ。
取り敢えずここでストップしておくことにして。ポケットの中からスマホを取り出し、ある番号へと発信。相手は暇だったのか、ワンコールが鳴り終わる前に電話を取ってくれた。
「もしもーし。暇なんでしょ? ちょっとさ、お願い頼まれてくれない?」
内容を聞いた相手は二つ返事で引き受けてくれた。流石。
「……見納め、か」
窓の向こう側を一度見て。確保できたものを手に、オレは初めの一歩を大きく踏み出した。
❀ ❀ ❀
「……え。ヒナタくんがそんなことを?」
話し合いが終わった朝日向家と花咲家は、みんなが待っている大きな会場へと向かっていた。
「そうそう。ほんと、ひなたくんには頭が上がらないというか」
「あおいちゃんのことが好きなんだなって、ものすごく伝わってきたの」
ううぅ。そ、そんなことを言われましても……。
「あらあおい。顔が赤いわね」
「お、お母さん……」
「あおい。熱でもあるんじゃ」
「お父さんは自分の心配をしなさい」
「……そうでした」
父にはそんな風に言ってしまったけど。……だっ、だってしょうがないじゃないか。嬉しいけど、すごく恥ずかしかったんだ。
でも、それも一瞬で。隣の人が、ちょっと尋常じゃないくらい震えだしたから正気に戻れたけど。
「どうしよ俺。やっぱりいろんな人に殴られるかな……。そしたら結局顔が変形する……」
「イケメンになるんじゃない?」
「……くるちゃん、俺ってそんなに不細工?」
「イケメンがもっとイケメンになるんじゃないかってことよ」
「くるちゃん……!」
上手いこと手の平で転がされている父に、ミズカさんやヒイノさんは言うまでもないが、そう言った母まで苦笑い。でもわたしは、そんなやりとりがこの顔ぶれでできていることに、未だ実感が湧かなくて。
「でも……いいんですか? わたしの意見で」
先程まで話していた、これからの話を引っ張り出す。
「ああ。もちろんだ。あおいが決めたんだからな」
「あおいちゃんが、こうがいい! って言うのに、わたしたちが反対するわけないじゃない」
ミズカさんとヒイノさんは、満面の笑顔でわたしにそう言ってくれる。もちろん、自分が決めた選択に後悔はない。でもやっぱり、これで本当にいいのだろうかと、少し心配なこともあったりして……。