すべての花へそして君へ①
「えー、ごほん。わたし、道明寺改め朝日向葵と申します」
「……はい。よく存じてます」
「だいぶ人間離れしてますが、わたしはただの人間だと思ってます」
「『思ってます』とかじゃなくて、間違いなく人間だから」
「そして、いろいろできますが相当のおバカです」
「……よく存じてマス」
『一体何が言いたいの』と、彼はそんな表情で首を傾げながら見下ろしてくる。わたしはゆっくりと歩みを緩めて止まり、そんな彼を見上げた。
「そんでもって、ヒナタくん大好きなんですけど」
「は?」
「大好きで大好きでしょうがないんですけど」
「……ちょ」
「いつもの悪魔な感じでお願いします!」
「……は?」
「ドMなんで、ドSなヒナタくんがいいんですっ!」
全力で言い終わるのと同時に、なかなかの強さで頭にチョップを食らった。
「ハイ。ドMなのはよく知ってるけど、意味がわからないのでもう一度やり直し」
「すんませんっ!!!!」
「……ちょっと落ち着いて。別にオレもう逃げないから」
いやあ。ちょっくら暴走しちゃったよ。でも、これでもわたし、結構ストレートに言ったつもりだったんだけどな。
少し思案していたら、繋がれた手がクイクイッと軽く引かれた。どうやら歩きながら話したいらしい。
(……ゆっくりだ)
先程よりスピードを緩めたみたいだけど、さっきも別に速いわけじゃなかった。きっと気を付けて歩いてくれてたんだと思う。
パーティーの準備とか。皆さんにきちんと感謝しないといけないなーとか。いろんなことお話したいなーとか。その他諸々の理由で、早く行くべきなんだろうけど……。
(……おんなじだったら、いいな)
少しでも、長く。二人だけの時間を過ごしたいって。そう、思ってくれてたら…………嬉しいな。